統合失調症の陽性症状である、幻聴、幻覚や妄想。
これらの症状は特に病識が持ちにくいとされています。
投薬治療をされている方でも「今の声は幻聴?」と現実との区別が付きにくい様で、それがストレスになる事も多々ある様です。
周りの家族が、「今のは幻聴だよ。」と言っても信じてもらえない事もよくあります。それが原因で理解されにくいのでは?と私は思います。
なぜかと言うとこちらには一切聞こえていない訳でそんな訳ないと分かっている反面、幻聴が聞こえている側からしたら本当に聞こえている様に感じているから、声が聞こえた!と信じている訳で、意見が衝突してしまい、お互い分かり合えずどちらも疲れてしまいます。
そこで周りの人間が病気を理解する、
統合失調症の症状には幻聴がある。
という単純な言葉だけを理解するのではなく、
頭の中でどう処理された結果幻聴が聞こえてくるのかを理解する。
そういう理解の仕方が大事なのではないかと思います。
状況意味失念が原因
認知という言葉はつまり、「認め知る」という意味になります。
その認知の対象には即物意味、状況意味の二種類があります。
即物意味とは「その対象が何か。」
状況意味とは「その対象はその状況下で何を意味するか。」
になります。
例えば、今あなたは道路を歩いており、目の前に財布が落ちている場面を想像してください。
(対象のモノをXとします)
即物意味 | 状況意味 |
Xは財布である | Xは誰かがうっかり落としたのだろう |
この状況意味の認知が失調してしまうのが統合失調症です。
普通の人であれば認知できる事が、状況意味の認知の失調によって様々な症状が現れてきます。
例えば、家の中にいる時に外から子供の遊んでいる声が聞こえてくる状況だとした時に、統合失調症の病症では、
外から聞こえて来る言葉が自分の悪口を言ってくる。
と感じてしまいます。
これを即物意味、状況意味に置き換えてみると、
即物意味 | 状況意味 | |
健常者 | Xは声である | Xは外で遊んでいる子供達の声であろう |
統合失調症 | Xは声である | Xは外から私を監視している人の声だ Xは外の人が私の悪口を言っている声だ |
普通であれば、何の気にも止めないただの生活上の雑音ですが、そこの認知が失調する事で自分の事を言っている様に聞こえてしまう。
そこから始まってどんどん症状が移行していき、被害妄想がひどくなり最終的に幻聴、更には自分の意思とは関係なく独り言を喋ってしまうようになる。
気づけば自分とは違う別の意思が自分の中にいる感覚に陥ってしまう。
健常者が想像するだけでもそんな状態になってしまったら自分を疑う事なんて出来ないと想像つきますよね。
幻聴の正体
聴覚とは耳から聞こえてこる音を感じる知覚機能の事です。
幻聴は自分の思考が聴覚へと切り替わってしまう状態の事です。
自分の眼で見たもの、耳で聞いて感じた事への意識や思考が自我であり、その自我に障害がでてしまうのが統合失調症です。
要はそこに障害が出てしまう事によって、自分の頭の中で思った事(無意識も含め)が聴覚に切り替わってしまう事によって幻聴が聞こえてくる。
この様な背景思考の聴覚化は聴覚によって脳が処理する為、当の本人には本当に聞こえている様に聴こえる為、現実との区別が難しく、先ほど述べた状況意味失念によって更に現実との区別が困難になり妄想の世界に囚われてしまうのです。
なぜ幻聴は自分を悪く言ってくる声が聞こえて来るのか
陽性症状による幻聴の声というのは、自分の事を悪く言ってくる場合が多いのです。
その原因はドーパミン神経細胞の過剰活動によるせいだと言われています。
ドーパミンとは、神経伝達物質の一つで、快く感じる原因となる脳内報酬系の活性化において中心的な役割を果たしている。
e-ヘルスネット(厚生労働省)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-047.html
ドーパミンと聞いてよく耳にするのが、
パチンコで大当たりをした時にドーパミンが出る。等、快楽を感じた時に分泌される。
ではないでしょうか。
そう言った認識の方が多いと思います。
しかし、今日では一部のドーパミン神経は嫌悪感や忌避感にも反応する事が分かっています。
つまり、
ドーパミンが過剰に活動する=自分に嫌な出来事が起こっている様に感じる
その結果幻聴でよく自分の嫌な事ばかり言われている様に感じてしまう訳です。
※当記事は
「統合失調症の病態心理」著中安信夫
を参考にさせて頂きました。
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